一日は長し、一生は短し

2013.08.28

海賊と呼ばれた男

夏も終わりに近づき、一雨降ったせいもあるが、昨晩の夜風はヒンヤリとして、肌に触れる感じが心地よかった。

セミの鳴き声も「ジー、ジー」や「ミーン、ミーン」から、いつの間にやら「ツクツクホーシ、ツクツクホーシ」に変わった。

僕は季節では夏が一番好きで、ダッラダラに汗をかきながら飲むジョッキの生ビールとかぶりつく焼き鳥は最高だ。

但し、汗をかいた時に、足にまとわりつくスーツのズボンは何とかならないものかといつも思う。

それさえなければと思うものの、嫌なこともなければ、夏が過ぎ去っていくのは寂しくて仕方がないだろう、と変な理由で自分を納得させる。

秋は秋のよさがあり、冬は冬のよさがある。俺には俺のよさがあり、やつにはやつのよさがある。なんて、そんな風に考えながら、前向きに人生を楽しみたいものだ。

さて、今回紹介する本は、以前紹介した「永遠の零」(講談社文庫)の著者、百田尚樹氏の「海賊と呼ばれた男」(講談社)である。戦後の日本がGHQの統治下に置かれる中、次々と降りかかる大きな圧力に屈せず、国の高度成長に繋がる礎を築いた男、出光興産の創業者の出光佐三氏について書き下ろした物語だ。

とは言っても、出光佐三氏は「国岡鐵造」として、出光興産は「国岡商店(後に国岡商会)」として架空の名前で表現されていて、前書きも後書きもないので実名には一切触れられていない。

「永遠の零」でもそうだったが、史実を知らずに読めばフィクション小説に思えてしまうが、読みながら途中で調べていくとほぼ事実で、百田氏の作風はフィクション仕立てのノンフィクション小説と言える。(まだこの2冊以外読んでいないので、ちょっと自信はないが・・・)

僕は社長という立場上、経営者としての心構えについて、研修を受けたり独学で勉強したりしているが、ピーター・ドラッカーにしろ、松下幸之助さんにしろ、世間で名の通った経営者やコンサルタントが言っていることの核は、すべて同じだと思っている。

それは、「正しいことを、信念を持って行動する」ことだ。

但し、「誰の為に」という対象が大切で、会社の経営者であれば「お客様」であり、政治家であれば「国民」であり、教師であれば「生徒」だ。
 
この本の主人公は、太平洋戦争で会社の建物以外、事業を行うに必要なもの全てを失っても、仕事が皆無の中、ただひとりの社員も解雇せず、国岡商会として石油販売を復活させる。

その間、さまざまな困難が降りかかるが、「自分たちがやることは消費者の為であり、結果的に国家のためになる」という強い信念で危機を乗り越えていく。

それが、石油販売がまだ自由化になっていない時代の話であり、また大国が世界の石油利権を支配していた時代の話であることを考えると、この主人公が如何に行動力があり、また周囲から信頼されていたのか、想像するに難くない。

しかし、それ以上に、奇跡を惹き起こす「何か」を主人公は持っている。その「何か」は何だろう、と考えさせられるが、そう簡単に答えの出ないものであることは確かだ。

縁あって、小宮一慶さんの話を聴かせていただく機会が何度かあったが、こんなことを言われていた。

「利益を追うな。仕事を追え!」

利益のことを考える前に、会社に期待される仕事は何かを考えて、正しい行動を取る。そうすれば、利益は必ず後からついてくるそうだ。

そう考えながら、ここ何年かやってきているものの、まだまだ邪念があるのか、利益がなかなか追ってきてくれない(笑)。邪念を振り払い、信念と情熱を持って、一歩一歩成長していきたい。

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