一日は長し、一生は短し

2008.02.05

叱ること

 以前にも書いたが、僕は大学を卒業して某監査法人に就職した。今は、監査法人の仕事も増えて、公認会計士の資格がなくても、いろいろな仕事を中心になってやっている人が増えたと聞く。しかしながら、当時監査法人に勤務する無資格者は、働きながら公認会計士の試験を目指している人が大半だった。

 そんな中で、代表社員の先生(普通の職場で言えば役員)から、仕事中であっても受験勉強することを僕は許可されていた。早く資格を取得して、一人前の仕事をしてもらいたいという期待からのお許しであったと思う。勉強嫌いの自分としては、仕事で外に出ている方が楽しかったが、事務所内にいる時は、そんな訳でいやいや本を読んでいた。(今思えば、その先生に申し訳なかったなあ・・・。期待に応えられなくて。)

 そんな仕事生活を送っていたある日の出来事である。「君な、他の人が忙しく仕事をしている時に、よくのん気に本なんて読んでいられるな。給料貰って勉強できるなんて、いい身分だな。でもな、それに甘えていたら、いくら本読んでも自分の身につかないぞ。」と耳元で囁く先輩がいた。「俺は大先生から許可もらってるんだ。そんなこと言われる筋合いはない!」と心の中で思ったが、予想もしない言葉に赤面しながら本を閉じた。

 今思えば、その先輩は当たり前のことを言ったまでだし、それが当たり前だと気付かない僕に対して、本当の意味での優しさをぶつけたんだと思う。何故、今、こんなことを書いたかというと、最近、社内でも同じようなことがあったからである。幸い会社の場合は、叱った方も叱られた方も、大人の常識をわきまえていて、今では親分子分の絆は相当強いものになったと思う。

 最近は、とかく家庭でも仕事場でも、叱ることを避けてしまい、結果的に家庭崩壊や組織崩壊に繋がっているケースが多いように感じる。自分本位で怒ることはあってはならないし、対し迎合するだけでも駄目だと思う。ましてや、コミュニケーションの放棄なんてとんでもない話だが、相手の立場に立って叱ることがどれだけ大切なことか。上に立つ者は、まずそれを知るべきであろう。

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