一日は長し、一生は短し

2008.09.22

医者が泣くということ

 聖路加病院に細谷亮太というすばらしい先生がいる。専門は小児科で、同病院の小児科部長として重篤患者の治療に当たっている。細谷先生は、医者でありながら俳人でもあり、本も何冊か出されている。

 その細谷先生の何がすばらしいかと言うと、今まで看取った200余名の小児患者すべてを憶えている点だ。一人一人の子供達に対し、誠心誠意を尽くして最後まで治療に当たられた結果だと思う。何とか小さな命を救いたいと、子供達の精神的なケアを含めて、一生懸命になられている姿が目に浮かぶ。

 小さな命が大人の手によって奪い取られたニュースが、昨日・今日と流れている。こういうニュースを聞くと、本当にやるせない気持ちになる。この世に生を受けて、世の中にあるものをまだちょっとしか見ていないうちに、「死」の意味すら全く考えることのできないうちに、強制的に人生に終止符を打たれてしまう。

 小児ガンなど重い病気と一生懸命戦っている小さな子供たち、必死に彼らを救おうとする細谷先生のような人たち。たった数年の人生しか知らずに死んでいく子供たち。自分の都合や欲求だけで小さな命を奪い取っていく大人たち。

 運がいいとか悪いとか、運命だと言って片付けてしまえるような問題ではないと思う。「医者が泣くということ」というタイトルの本を細谷先生が著している。「生きる意味」「死ぬということ」を改めて考えさせられる本である。身勝手な大人たちをこれ以上作らない世の中にしたいものだ。

ページTOPへ