一日は長し、一生は短し

2009.05.09

一瞬の風になれ

 佐藤多佳子さんが著した「一瞬の風になれ」という本があるが、2007年度の本屋大賞と第28回吉川英治文学新人賞を受賞されただけあって、非常におもしろい本だ。

 陸上競技をテーマにした全3巻の長編小説だが、読む者をぐいと引き込んで離さない。一文一文が川の流れに浮かんだ葉っぱのようで、それを追っていくうちにあっという間に読み終えてしまう本である。

 僕は陸上とは縁がなかったが、青春時代にいろいろスポーツをかじった一人として、あんなことあったなとかこんなことあったなと思い起こさせられ、ジーンとくるシーンがいくつもあった。

 その中でこんな下りがある。「神様に貰ったものを粗末にするな。貰えなかった奴らのことを一度でもいいから考えてみろ。」

 群を抜いて足の速い登場人物が、その才能を粗末に扱っていることを別の登場人物が咎めた言葉であるが、僕はこの言葉を聞いて涙が出てきた。

 自分の可能性のあることに、心底真剣に打ち込んでやったことがあるだろうか・・・? これは今の仕事という狭い範囲で言っているのではなく、生まれて以来の人生においてという大きな意味で自問自答しているのだが。

 僕の回りにもそういう人がいっぱいいる。社員の中にも何人もいる。そういう人たちに気づいてもらうような言葉を投げかけてあげるのも、社長やリーダーの役割なんだろうな。

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