一日は長し、一生は短し

2013.03.26

父親のための人間学

 学校が春休みに入り、平日の昼間は比較的空いている新幹線も、この時期は多くの家族連れで賑わいを見せている。

 東京と名古屋を往復する間、それぞれの家族を観察していると、親子の接し方や会話からその家族の日頃の生活を垣間見る事ができる。

 微笑ましい光景の一方、(我が家は決して人には自慢できるような家庭ではないが)他人への迷惑を顧みず、子どものわがままな行動をニコニコしながら眺めている親には呆れてしまう。

 逆に、荷物を一杯抱えながら、小さな子どもの手を取り、オロオロしながら席を探すお母さんを横目に、隣に平気で荷物を置いている紳士然としたビジネスマンにも、これまた呆れてしまう。

 どうしてこんなに気遣いのできない人が増えてしまったのだろう?と日本の行く末を心配しながら、いろいろ考えていくと、辿り着いたのは「教育問題」だ。特に大切な問題は「家庭教育」だ。

 さて、今回は、日本を代表する哲学者の西田幾多郎氏に教えを受け、戦前は師範学校で、戦後は大学の教育学部で教鞭を執り、日本の教育界に大きな影響を与えた森信三氏(故人)の著書「父親のための人間学」(致知出版社)を紹介したい。

 氏は「人生二度なし」を持論とし、それを本書では「父親としてどう生きるのがいいのか」という広範で奥の深い問題を簡潔に説いて聴かせてくれる。

 子どもと接する時間の長い母親と、仕事でろくろく子どもと会話の時間さえ持てない父親とは、家庭教育における役割が違う。

 幼少からの躾という点は、主に母親の役割で、父親の出番は、子どもが中学や高校に入って多感な時期を迎える頃からだ。

 また、父親の権威というのは、それを意識して威張り散らすことではなく、それまでの人生で舐めてきた辛酸甘苦を通して、無意識のうちに全身から醸し出されるものである。

 そして、父親として我が子に遺す唯一の遺産は、人間としてその一生をいかに生きてきたかということだ。

 簡単なようで、難しく、難しいけれど、当たり前で、当たり前だけど大切なこと。それを考えさせられる一冊である。
 
 この本は二度読み直して、その簡潔な文章が意味する事をしっかり理解してから感想を書こうとしたが、生憎、後輩に貸し出してしまったので、文中の表現と異なるところが少々あるかもしれない。

 その点はお許し願いたいが、日本の再生のスタートは「家庭教育」にあり、是非、世のお父さんには読んでもらいたい。尚、母親向けとして、僕が妻にプレゼントした(読んでくれたかどうかわからないが・・・、笑)、「女性のための修身教授録」や「家庭教育の心得21」という本も出版されているので、是非奥様に勧めていただきたい。

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